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「卵を一つのカゴに盛るな」という嘘。バフェットが説く『能力の輪』と集中投資の本質

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「卵は一つのカゴに盛るな」

投資の世界で最も有名な格言の一つです。すべての卵を一つのカゴに入れると、カゴを落とした時に全滅してしまう。だから分散させなさい、という教えです。

しかし、少し日常に目を向けてみてください。あなたはスーパーで特売の卵パックを買ったとき、その卵をわざわざ一つずつ別の袋に詰め替えて持ち帰るでしょうか? そんな人は稀でしょう。多くの人は一つの袋に入れ、その袋を「落とさないように慎重に」抱えて帰るはずです。

投資においてだけ、なぜ人は思考停止して「袋を分けたがる」のでしょうか。今日は、史上最も成功した投資家ウォーレン・バフェットが生涯をかけて実践してきた「サークル・オブ・コンピタンス(能力の輪)」を軸に、多角化という名のギャンブルについてお話しします。

多角化は「無知」に対するヘッジである

多くの組織や個人が、資金ができるとすぐに多角化(Diversification)を目指します。しかし、これは往々にして「多悪化(Diworsification)」にしかなりません。

なぜなら、私たち人間の認知能力は、本人が思っているほど高くないからです。真剣にビジネスや投資に向き合えば向き合うほど、一人の人間が真に理解し、コントロールできる対象はせいぜい1つか2つが限界であることに気づきます。

それなのに、なぜ多くの人が分散を推奨するのか。それは「自分が何に投資しているのか理解していない」からです。何が起きるかわからない、企業の価値がわからない、だから広く薄くばら撒いて、確率論に逃げ込む。

バフェットはこの本質を、いつもの穏やかな口調でこう言い表しています。

分散投資は無知に対する保護だ。自分が何をやっているか知っている人にとって、それはほとんど意味をなさない。

彼が率いるバークシャー・ハサウェイのポートフォリオを見れば、この言葉が単なる理論ではないことがわかります。数千億ドル規模の運用資産のうち、上位5銘柄だけで全体の75%以上を占める。60年以上にわたって年平均約20%のリターンを叩き出してきた投資家が選んだ答えが、「集中」なのです。

能力の輪(Circle of Competence)の内側に留まる

投資や事業において最も重要なのは、自分の「能力の輪」の大きさを知ることではありません。その「境界線」を厳密に把握することです。

輪の内側にあるかどうかを判断する基準は、例えばこうです。

  • 自分が理解できるビジネスモデルか?
  • 永続的な優位性を論理的に説明できるか?
  • 10年後の姿を想像できるか?

一つでも「No」があるなら、それは輪の外側にあります。

この輪の外側にあるものは、どんなに魅力的に見えても手を出してはいけません。理解不能な分野にお金をばら撒く行為は、投資ではなく単なるギャンブルです。

「卵を複数のカゴに分ける」ということは、注意力を散漫にさせることと同義です。あちこちのカゴに気を取られている間に、足元の石につまずくのがオチでしょう。

そして、この「能力の輪」という概念が厄介なのは、輪の境界線が内側からは見えにくいことです。わかっているつもりが、実はわかっていない。投資の世界では、この「つもり」が致命傷になります。

リスクの再定義

一般的にリスクとは「価格の変動」を指すとされますが、本質は違います。「リスクとは、自分が何をやっているかよくわかっていない時に生じるもの」です。

スーパーの卵の話に戻りましょう。リスクを回避する方法は、卵を別々の袋に入れることではありません。「卵が入ったその袋を、誰よりも慎重に、目を離さずに運ぶこと」です。

これが集中投資の真髄です。徹底的に調べ上げ、徹底的に調べ上げ、確信を持てる対象を見つけたなら、そこに資金を集中させる。そして、その対象を徹底的に監視する。それが最も安全で、最もリターンを生む方法です。

ただし、ここで問われるのは「あなたは本当に、その卵を落とさずに運べる人間なのか?」ということです。自信があるなら、集中投資は最良の選択になる。しかし、その自信に根拠がないなら、分散は「無知の自覚」という意味で、むしろ正しい選択です。

まとめ

組織が大きくなると多角化したがる病にかかるのと同様、個人投資家もまた、不必要な銘柄数を持とうとします。しかし、資産を築くのは常に「集中」であり、資産を守るのは「知識」です。

あなたの「能力の輪」はどこにありますか?

この問いに即答できる人は、そう多くないはずです。投資先を増やす前に、まず輪の境界線を見極める。遠回りに見えて、それが最も確実な道です。

卵を入れるカゴは、一つでいい。

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